漢字を筆順に沿って一画ずつ書く行為は、コンピュータの「順次」プログラムに似ていて、自分自身にプログラムした漢字の筆順で体を制御して漢字を書くのです。ここで紹介する「筆順プログラム」は、筆順をコンピューターに覚えさせて漢字を再生する活動です。一般的に「人に教えることは自分自身の学びにもなる」とよく言われますが、コンピューターに書き順をプログラミングする中で自分自身の学びを目指す、漢字の新たな学習法の一つです。
教科 | 関連とコメント |
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国語 | 学習指導要領解説国語編/第3章/第1節/1[知識及び技能]/(3)我が国の言語文化に関する事項/ウ書写に関する事項/(イ)点画の書き方や文字の形に注意しながら、筆順に従って丁寧に書くこと・・・とあります。この活動は、一角ごとにパーツで描く際に、点画の描き方や文字の形をバランス良くしようという意欲や筆順通りに表示させようという意欲が自然に湧いてくる活動です。 |
プログラミング | 学習指導要領解説総則編/第3節/1主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善/(3)コンピュータ等や教材・教具の活用、コンピュータの基本的な操作やプログラミングの体験/イ児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につけるための学習活動/に「また、小学校においては特に、情報手段の基本的な操作の習得に関する学習活動およびプログラミングの体験を通して論理的思考力を身につけるための学習活動を、カリキュラム・マネジメントにより各教科等の特質に応じて計画的に実施すること・・・とあります。ビスケットによる「プログラミングと教科の経験学習」(V-EXLIPS)は、各教科等の特質に応じて学習内容をコンピュータに処理をしてもらうためのプログラミング的思考(自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけばより意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力)を育成する活動です。 |
視点 | ねらい・評価規準 |
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教科として | 漢字の形や筆順を、一画ずつの部品として捉え、見通し持って粘り強く組み立てる活動を通して、漢字の字形や構成・筆順に興味・関心を持ち正しく理解している。 |
プログラミング教育として | 筆順アプリなどのアニメーションは、一定の手順で組み立てられたプログラムにより作られていること気づいている。 |
視点 | ねらい・評価規準 |
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教科として | 漢字の形や筆順を、一画ずつパーツにしてプログラミングで表現する活動を通して、漢字の多様性に気づくとともに規則性を見出したり、既習事項を用いて表現したりしている。 |
プログラミング敎育として | 漢字の筆順通りに漢字を完成させるために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一連の筆順に対応した一画ずつのパーツをどのように組み合わせて行くかを論理的に考えている。 |
視点 | ねらい・評価規準 |
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教科として | 個人・ペア・グループなど学習の形態を変え、友だちの考えから学ぶ機会を設定するとともに、漢字の学習を書いて覚える反復学習のみと捉えず、様々な学習の仕方を体験し、より良い学習方法を探って行こうとしている。 |
プログラミング教育として | 漢字の学びにプログラミングを取り入れる活動を通して、コンピューターの便利さを学習に活かし、自らの思考のプロセス等を客観的に捉えている。 |
※ビスケットの操作が初めての場合は、「学校でビスケット3」や自由制作を行ってから本案を実施してください。教科の学びをさらに深めたい場合は調べ学習を別コマで行ってください。機材環境がPCの場合は、児童のマウス操作の習熟度合いにもよりますが、1.5〜2倍の作業時間を想定してください。
流れ | 時間 | 活動内容 | 教師の動き | 指導上の留意点 |
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体験する | 15分 | 教師によるデモを見ながら書き順プログラムを,個人(ペア、グループ)で作ってみる。 Step1.programming page | 題材とする漢字の書き順を確認し、書き順プログラムのデモをする(または動画を見せる。)全メガネが載っているチートシート兼ワークシートを作っておき、デモ後にそれを配布する。sample program | 普段の漢字テストの結果等から、画数が少なめで児童が苦手な漢字を選んで行う。 |
ふりかえりをシェアする | 5分 | 個人(ペア、グループ)で、モデルプログラムを作った中でどんなことが起こったかを、教科やプログラミングの視点でふりかえる。全体でシェアする。 | オリジナルを作ることを知らせ、児童の感想や疑問の発言を促し、関心・意欲を高める。 | 「体験する」でデモした漢字を何も見ないで書いてみるようを促し、漢字プログラミングの効果を感じてもらう。 |
オリジナルを考える | 5分 | 自分がつくりたい書き順プログラムに使用する漢字を決定し、書き順を確認してワークシートにメモしておく。 | 机間指導で児童の進捗状況を把握する。決定に時間がかかっている児童には、作りやすいモデルを提案し、活動を促す。 | 児童が習った漢字を調べられるように、教科書やドリル、辞書や漢字アプリなどのツールを準備しておく。ただし、10画以上の漢字の場合は、既出の部首は一画ずつではなく部首でプログラムしてよいことを伝える。※例:「曜」の字の「日」の部分や「ヨ」の部分など |
トライアル&エラー | 20分 | 個人(ペア、グループ)で自分のプログラム作成に取りかかる。早くできた児童はワークシートにまとめを書き、友だちのサポートに回る。 | 机間指導で児童の進捗状況を把握し(ワークシートは教科についてのふりかえりとプログラミングのふりかえりの両方が簡潔に記入できるものを準備しておく。) | 正しい書き順を追求しすぎるのではなく、字形を楽しく覚えられるよう配慮する。※昭和33年文部省作成「筆順指導の手びき/1.本書のねらい」によると「本書に示される筆順は、学習指導上混乱を来さないようにとの配慮から定められたものであって、そのことは、ここに取り上げなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また、否定しようとするものでもない」とある。 |
視点 | 指導上の留意点 |
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教科として | 画数が多いと作業的になりがちなので、十画以上の漢字の場合、既出の部首などは一画ずつではなく部首やまとまりでプログラムする。この活動によって、漢字により興味・関心が高まった児童は、既習事項外の漢字について興味・関心が出てくることがある。デジタルアナログに拘らず、児童の調べたい漢字を検索できるツール(国語辞典、漢字辞典、アプリ、電子辞書等)を準備しておくと、主体的・対話的で深い学びに繋がる活動に導きやすい。従来通りの活動実施後に取り組み、学習に対する関心・意欲の高め、理解を深化させる活動の一環として行う。 |
プログラミング教育として | 活動に個人差があるので、早く終わった児童は他の児童から求められた時には教えにいくようにすると、学級作りとしても教え合う集団作りができる。教える際は、手を出して代わりに作るのではなく、やり方を説明した後、質問した児童本人が考えて手を動かすような教え合いができるよう促す。 |
「昼」の場合の筆順プログラム例です。⬇️(こちらは筆順として成立させるための最低限のものです。先生(児童)の創意工夫で色々とアレンジをするとオリジナルな筆順プログラムができます。)
「昼」という漢字の筆順プログラムを作る場合の説明です。歯車マークを押し、マス目の設定にします。⬇️
まずはパーツを作っていきます。「昼」という漢字の完成品を書きます。⬇️
「昼」という字を1画ずつのパーツにしていきます。すでに作ってある「昼」の完成品をタッチして書くと、同じ濃度と太さで書けます。一画目を書きます。二画目以降も同様にして、九画目まで書きます。⬇️
メガネを使ってプログラムしていきます。メガネは9個必要ですが、先に出してもその都度出してもどちらでも構いません。まずは、ステージに完成品の「昼」を置きます⬇️
1つ目のメガネの左側に完成品の「昼」を入れます。⬇️
1つ目のメガネの右側に一画目のパーツを入れます。この1つ目のメガネは「もし昼(完成品)がステージに存在したら、一画目のパーツに変化する」という意味です。⬇️
2つ目のメガネの左側に一画目のパーツを入れます。⬇️
2つ目のメガネの右側に二画目のパーツを入れます。この2つ目のメガネは「もし一画目のパーツがステージに存在したら、二画目のパーツが追加される」という意味です。以下二画目から8つ目のメガネの八画目まで、同様に作っていきます。⬇️
9つ目のメガネは左側に八画目のパーツ、右側に「昼」の完成品を入れます。この9つ目のメガネは「もし八画目のパーツがステージに存在したら、完成品の『昼』に書き換える」という意味です。9つ目のメガネの右側に完成品の「昼」を入れたことによって、1つ目のメガネの命令が有効になるので、結果として無限ループすることになります。⬇️